NPO法人バーブレスフック普及協会について
代表理事挨拶
「サスティナブルな釣りとは」
NPO法人バーブレスフック普及協会 代表理事 吉田俊彦
長年、皆に魚釣りを勧めてきた。とりわけ子供たちにはそうだ。私の地元、埼玉県入間市の「霞川夏休み水辺の生き物教室」は今年(2020年)で16年になる。釣りや川遊びを通じて自分が子供の頃に体験した同じ感動をしてもらい、子供たちに故郷の自然を好きになってほしいのだ。
一方で、魚にとって一番いいのは釣りをしないことであり禁漁にすべきだと主張する人々がいる。人が捕ってしまうから魚がいなくなるという意見である。正論のように聞こえるが、子供たちが水辺を体験する機会を失うことは自然への興味も失うことになりかねない。
私はこのような禁止論的な考え方ではサステナブル(「未来にわたって持続可能な」という意味)な社会を実現することができないと感じる。子供たちが無関心になって自然への興味が途切れてしまうことほど大きな損失はないと思うからだ。
日本人は江戸時代から大切な海の漁場を守るために、各地で「魚つきの森」を大切にしてきた。維新以降も明治政府は真鶴半島の「魚つき林」を保護指定している。戦後は宮城北部で始まった大漁旗を揚げた漁師による植林「森は海の恋人」運動が日本各地に広がっていった。
科学的な根拠もない時代から、森が豊かでなければ海が豊かな漁場にならないことを理解していた先人たちには驚かされる。300年も前から魚を安定して食べ続けている食文化は長年にわたり森を大切にした結果であり、サステナブルな漁場管理において日本は先進国じゃないかと思う。
真鶴半島の魚付き林。様々な広葉樹の巨木が生い茂っている。
【私たちにできること】
そんな先人たちの努力を無駄にしないように、私たちは釣り人として釣りの未来に無関心ではいけない。だから誰にでもできるちょっとサステナブルな釣りを提案しよう。それは1日何匹釣って満足するか決めることと、バーブレスフックを使うことである。事前の目標設定は乱獲を予防する。また釣りバリにバーブ(かえし)があるかないかで幼魚のダメージに大きな差が出てしまう。幼魚を大切にリリースすることはいつまでも良い釣りをするための必須条件だ。
地球の環境を壊さず、資源を使い果たすことなく子孫にバトンタッチしていくことがサステナブルな社会だと思う。ならば私たちにできることは釣りを通じて自然への興味と敬意を持ち続けること。こんな小さなことの積み重ねが持続可能な社会を構築していくと私は信じている。
『釣りとサステナブル』文:吉田俊彦 2020年5月26日スポニチ「釣りの旅」掲載記事より一部抜粋
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